脳梗塞 ワレンベルグな日々

ワレンベルグ(症候群)は脳梗塞の一種

リボルバー、1ビット(修正編)

(この記事を読む人は限られているのだが、ものすごい長編すいません)
 図書館からだいぶ前に借りてきた、原田マハ氏のアートミステリー作品、『リボルバー』を読み終える。
かなり新しい2021年作、ゴッホゴーギャンの関わりにフォーカスを置いた作品だが、現代の女性オークション・エージェントが主人公という異色作。
 さて問題は、私が返却日19日(土)を過ぎているのに気づいたのが 翌日20日の夜だったこと。その時はまだ読み終えてなかった。期日管理も出来ないなんて。…先週末のヤフオクは熱くなった、
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 土日明けの月曜、嫁さんは出勤準備だが、自分は朝一から本読み、ラッシュで残り半分を怒濤の如く読み進め、終えたのは10時。すぐに図書館へ他の本と合わせて返却しに行きたい。しかし、
 所有するシャープ製1ビットCDの後継機(の出物)を土日にかけて落札、支払いしており、メールの処理に手間取る。何とか区切りをつけ、白クマ号を飛ばす、しかし、

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まさかの休館日。毎月曜が休館日であることも脳から抜け落ちてしまっている、運転酔い より重傷である。
 とりあえず、図書館前の無人返却ボックスに返却だけして、仕事をしている妻に頼まれた買い物をして家に帰る。ほんとうに空虚な外出感である。
 慌てて読んだリボルバー、もっと味わいながらゆっくり読みたかった。
ゴッホの拳銃自殺についての新たな仮説、出品物として持ち込まれた拳銃(リボルバー)は、その時のモノだと主張する所有者。ゴッホゴーギャンの関わり、代表作ひまわりも絡む。二人の歴史を紐解きながら、現代のエージェントが核心に迫っていく、マハ氏の真骨頂である。また借りよ。


 さて、この1週間は、オークション及び1ビットオーディオ(後継)で心が揺れたのである。(ここから、オーディオに興味ない人は読み飛ばし)
元は、この記事後半。
  製造から20年超で、ほぼ絶滅種である。そもそも補修部品やメーカサポートはない(メーカがオーディオから撤退して10年超)。中古を丹念に探して、ヤフオク出物に一か八かである。そういう輩が少なからず生存、やっぱ1ビットCDコンポ、のマニアがいる。どれだけでもお金がつぎ込めるという「本格オーディオマニア」ではなく、せいぜいつぎ込めるのは、お小遣いの範囲の1,2万、そういう現実的なファンの間の駆け引きである。
というか、そのマニアが狙うのは、単品アンプの1ビットのはず。当時の値段で100万とか150万の高嶺の花だったが、今やヤフオクで10万出せば買えるのだから。

 さて自分が気に入っているのは、CD/MD部とアンプ部が分離しているsharp製1bitオーディオの系譜である。
 この歴史を簡単にたどると、時代はミレニアム、西暦2000年に遡る。それまではシステムコンポというアンプ、チューナー、デッキの各装置が分かれ、それぞれの得意専業メーカなどが居て、組み合わせたり、あるいは総合メーカ(例パイオニア)などのスピーカーを付けた一式セットが20万とか30万とかで売られていた時代から、ミニコンポと言われる、安くて音もそこそこの小型一体型が派生した時代であった。
①【黎明期〜拡大期】
 まず自分が所有するオーディオ、SD-NX10が初期型として作られる。(のちにそのマイナーチェンジ、クロックアップしスピーカーが大人しくなったNX-20も作られた)。本体は、未来をイメージするシルバーの梨地・鏡面の組み合わせの意匠である。そして小型ながら本格派コンポに負けない音質、独自の世界、これが1ビットという新しい技術を象徴し、今までに無いシャープの音作り(の拘り?)が受けてそこそこ売れる。
 NX10と同時に、CX1という廉価版1ボディが発表され、そしてその後も実は数種機種くらいCXシリーズのオーディオ、DVDを順次世に出し、1ビットいう技術を売りにシャープの、ホームオーディオでの地位を固めたかったようだ。
 初代NX10は、オーディオ界に対して切り込んだ、音質重視を図って、肝であるデジタル1ビットアンプ部とCD/MDコントロール部を分離独立させた。これが技術的にもマニアへの訴求(他にない技術、意匠)においても、インパクトを与えた・・大型システムに負けない音質をコンパクトオーディオで、しかも家電のシャープがその技術力で。このころのシャープは、リナザウとかノートPCもムラマサとか、何でも技術で尖って突き進むのが正義!という勢いがあった。
②【高級路線化〜終焉期へ】 
 そして、そのNX10は、その形を踏襲しつつ、高級機を目指し、内部が更に改善されたSD-SG11シリーズに進化する。色もつや消しの黒に統一され高級感を放つデザイン。もともとアンプ部の電源の弱点を基板設計変更より改善、音質も改良された。当初はスピーカーレスモデルでの販売(自信を持って売れると踏んだのだろう)とJBLELACの高級小型スピーカーセットでの3機種同時販売、スピーカー付きの値段が確か15万とか25万とか超高い強気の販売、が一方、逆にスピーカーとの相性を問うマニアやユーザーの声。高価になれば、技術の高さだけでは無い世界、感覚あるいは好みの世界に入ってくる(その後に、廉価版スピーカー付きも出されはした、ターゲットが絞り込めなかった)。
しかし、、高音質と高級ブランドとのコラボが話題にはなったものの、スピーカーで聴くオーディオの時代の潮目、新たな時代に入り始めていたのだった。
 シャープの、その渾身の最終形が2002年年末(クロックアップなどの改善の)SD-SG40というレアなスピーカーレスモデル(強気の15万の値札)。コストを存分にかけたオーディオは、これを最後に消えた、NX10型からこの間わずか2年、早すぎる高級路線の終焉には、タイミングを同じくした、時代の変化があった。
③【コスト競争・黒船〜廃業】 
 この後は、1ビットは、小型ワンボディ・オーディオ(CXシリーズ他へ多種展開)へ、あるいは、ラジカセのMD置き換え品やMDプレイヤーへの搭載(元々、IC化され、小さくすることは得意)など、個人消費、低コストなどの市場ユーザーの新たな変化に各社がしのぎを削る所謂、コスト競争の波に数年ほど飲まれる。その後に、国内のソニーを除くほぼ全てのオーディオメーカが辿った斜陽の道、最終的には1社また1社と次々に撤退廃業となる。オーディオ業界全体が最後は黒船に飲まれた。
 黒船 iPodや音楽産業を根底から変えるiTunesによる楽曲配信サービスとの連動で、棲む世界が全く変わってしまったのである。【終わり】

 話をやっと元に戻して、自分が落札したのは、ELACモデルのスピーカー無しジャンクである、1万5千円(送料含み、入札即落札)である。写真の真ん中の黒い物体のセットである。そして見事に音が出ない。。

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 CDとか動いているし、出し入れとかメカ的には問題ないのに、音だけ出ない。すぐ出品者に連絡し、出品者(中古ショップ)はすぐ返品返金に応じるとの返事が来た、ショップの規定で6ヶ月は保証、ただし修理は対応せず、返品返金の対応のみですという。
 少し落ち着いて、いろいろ確認してみると、どうやら肝のアンプ部は生きている、所有のNX10(シルバー)のアンプ部と入れ替えると動く。いや動くどころではなく、音が数段、綺麗になった。逆に、CD部を入れ替えてもCDを読んでいるのだが音が出ない。CD部(の音声出力回路)が、おそらく壊れているようである。ΔΣのΔのランプやLCDバックライトが消えている、ウラのネジに囓った痕跡、改造品か。
 蛇足ながら、1ビットアンプ部(単体)では動かない。他のCDプレーヤーなどに直接繋ぐことができない仕組み、、アンプ部(電源部を含む)は電源ボタン等がないのである、それがあるCD部と特殊コードで繋がれて初めて通電し電源が入る、さらにシステム用にオーディオケーブルで両者を繋がないと音が出ない(落札物はそのオーディオケーブル欠品)。結論、システムとしては音が出ず、アンプは生きていても単品では使えない故障品である。
 
 さてこの始末をどうするか。とりあえず、自分のそもそもの目的は、所有するコンポの電源(アンプ部)が不安定で、それの後釜さがし。カチカチいったり、電源がバチバチッと立ち上がり中に落ちたり、鳴らしていると(発熱?)熱暴走で落ちたりするという”あるある”の不具合の気配は、今のところなく、この落札アンプ部に置き換えてからは安定。音は絶品で、後釜ながら音質と安定の両方が備わっている。今返さなくてもいいのではないかと思える。

 そして、返品すれば、あの綺麗な音が聞けない。元々(かなり売れた中級機なのでタマは多い)同型のNX10を一万未満で落として後釜に据えるくらいだったが、運良く、後続機種(改善高級版)を手にした。そしてその予想を遙かに超える高音質のアンプの音に、心奪われたのである。
 いやこれは、運命的な出会。悪い言い方をすれば、出品者は(ジャンクだと小さく書いてあるが)音が出ないとか未確認ですとかの当然の情報が、もし書いてあれば絶対落札してないと思う。
 そして(半分騙されたみたいに)落札したらアンプ部だけ生きている、そういう使い方ができるのも限られた人(私)でしかない。私がヤフオクで落とすことが宿命づけられていたようなモノなのだ。

 ともかく20年前のモノだから、外観は仕方ないという出品が多い中で、写真通り外装の痛みがほぼなく、表と上側面の化粧パネル黒が美しい。ということで 嫁と相談し返品しないことになった。
(続く)
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シルバーのCD部(NX10)とアンプ電源部(SD-SG11)、JUJUのオールディズJAZZナンバーに酔いしれる。